サイトの移行などでぼやぼやしていたらかなり時間がたってしまいましたが、以前から行きたいと思いつつもなかなか行けなかった福島県二本松市で毎年開催されている第62回「二本松の菊人形」に行ってきた時のレポートです。
※こちらは2016年11月の記事になります
菊人形とは
菊人形が展示されるイベントは明治時代に盛んで、当時は両国国技館で行われた見世物興行が大盛況で、そこから全国的に広がっていったらしい。
大きいイベントとなると現在は、今回行った「二本松の菊人形」、福井県「たけふ菊人形」、大阪府「ひらかた菊フェスティバル」(大阪のイベントは最近復活したらしい)が三大菊人形まつりと言ったところになるようだ。東京都内でも「文京菊まつり」というイベントが湯島天満宮で開催されているらしいが、規模で言ったらやはり前者の方が圧倒的に大きい。
顔と両手、両足(足はない場合もある)が人形で、胴体部分は木材で作った骨格に菊をくっつけていくという感じで制作されている。
実際会場で菊人形の着せ替えが行われていたので、後々紹介します。
そもそも菊人形は見世物として親しまれてきていたので恐らく奇妙さや珍しさを売りに全国的に広がってきたはずで、昔は各所のお祭りなんかで大衆の前に姿を現していたようだが、今の時代ではイベントの数も減り、作り手も減ってきているそうだ。
しかし、菊人形と作り手が減少傾向にあったとしても元々は見世物として生まれてきたものが、各地に広がって場所によっては伝統として今でも生き続けているというところがとても面白く思う。
会場「霞ヶ城公園」へ
念願の菊人形まつりへ足を運ぶべく、割と遠い距離なので朝早く出発するも天候は生憎の土砂降り。県を跨げば多少は雨脚も弱まるかと思っても、雨は強くなる一方で、もはやあきらめてしまおうか?という気持ちも見え隠れするが、イベントの会期も終了間近でこれを逃すとまた来年という事になってしまうので、そんな気持ちは押し殺して会場へ向かう。
二本松市のインターチェンジで高速を降りて、昼食に喜多方ラーメンを挟みつつ、いざ会場の福島県立霞ヶ城公園へ。
駐車場から会場の霞ヶ城(二本松城)へ向かう途中、戊辰戦争で年齢を二歳かさ増しして出陣したといわれる二本松少年隊の像を横切り、お城へと向かう階段を登る。
階段を登り切るとお出迎え用の菊人形が一体姿を見せる。
やはり結構な雨脚具合だったので、人形に滴る雨水は少し気になるも、菊は勿論"生"なので多少持ちがよくなるのかもしれない。
城内に入り、お土産品や、軽食、物産展などの露店が並ぶ通りをまっすぐ進むと、会場の入り口が見える。
露店の並びで買った入場券(一般700円)をもぎってもらい中へ入る。
菊の品評会
入り口を抜けてすぐ、最初に見えるのが綾瀬はるか似の二体目のお出迎え用の菊人形。
まさに菊の祭典といった感じで、序盤は品評会の出展作品と結果が主となっていて、部門分けされた様々な種類の菊や盆栽などが展示されている。
花についての知識はほぼ皆無に近い自分ですら、目を見張るほど迫力のある作品も多々あって、今回は菊人形を目的としてきていたがこれだけ見に来るのもいいかな、と思ってしまうほど。
特に千輪咲と言われる一本の茎からなる巨大な菊の作品のど迫力っぷりはとても見ごたえがあった。
二本松の菊人形
品評会のゾーンを過ぎると菊人形が続々と姿を現す。
今回のテーマは「世界に誇る日本人」という事で、様々な年代の日本の偉人たちが菊の衣を羽織って舞台ににあがっている。
緑色で蕾のような部分はこれから咲く菊なのだろう。
序盤では野口英世親子の菊人形や、ポルトガル人のような顔つきの勝海舟などが展示されていた。
野口英世の後ろに立っていた二体の研究者という菊人形は、当日は気づかなかったがこれは野口英世のお付きの研究者なのだろう。菊人形なのに服を着ているのは珍しいのではないだろうか。
菊人形の展示には歴史上でよく知られる場面が設定されることが多いらしい。
狂歌、「織田がつき、羽柴がこねし天下もち、すわって食うは徳川家康」を表現した展示なんかもでてくる。
今の時代でさえよくわかる風刺が効いた歌を、菊人形(見世物)で被せて見せようというチョイスはなかなかのものだ。
他にもある歴史上の人物の菊人形たち。
二本松少年隊と共に菊人形になって記念撮影をすることができるスペースがあった。首部分は顔ハメ用で外されている為、なかなかミステリアスな展示空間となっている。
「命のビザ」など実記に準えて展示している菊人形などもある。
舞台上の背景などもイベントに合わせて制作されているのだろう。そういった菊人形以外のところも見ものである。
こちらは二本松の菊人形のご当地キャラ「菊松くん」。頭が菊でできている。
菊松くんのtwitterはこちら↓
終盤には菊の像なんかもある。
この回ではヤノベケンジと増田セバスチャンの展示も同時に開催されていて、若者の入場者を取り入れる対策もバッチリである。
菊師と菊人形の着せ替え
イベント会場の中盤には菊人形の着せ替えを間近で見れるブースがある。
菊人形に飾り付けられている菊は勿論”生”なので、会期中に花が枯れないように順々に「菊師」と呼ばれる菊人形を作る人の手によってチューンナップが行われている。
菊人形の骨格に菊を結び付けているところ。会期の残り数日というところでもぬかりなく作業が進められている。
この日作業されていた方は新人の方らしく、大阪から先生が来て菊師の仕事を教わったらしい。
「いま作業してるのは新人だけど、おばあちゃんなんだよ」
なんていう冗談も聞こえてきた。
調べてみたところ菊人形の骨組みと菊の飾りつけを行うのが「菊師」で、その他に展示の場面設定をする「絵師」、その他展示中に使われる道具類を用意する人を「道具方」というらしい。
菊人形は珍妙さと華やかさを兼ね備えていて、人形×菊という渋い掛け合わせではあるが、やはり実際みてみると、とてもエキセントリックな人形だった。
外見だけ見てしまいがちだが、完成に至るまでは緻密で繊細で時間の掛かる作業工程があり、そういった作業は会期中も続くし、菊の花の咲き具合も日によって変わってくるので見栄えも変わってくるのだろう。会期も二か月近くあるのだから一日しか見れなかったことは少し悔しい。
次回の「二本松の菊人形」開催もすでに発表されているので、是非次回も足を運びたいと思う。そして、いつかは準備段階も見てみたい。
おまけ:霞ヶ城(二本松城)に登る
雨も徐々に弱まってきたので、お城の天守台を目指すことに。
この日は11月の暮れだったので、山道は綺麗な秋色に染まっていた。それ目的で写真を撮りに来ている人も結構見かけられた。
足場もぬかるんでいるのにカメラを持って滝の近くに踏み込んでいくカメラマンの人なんかもいた。
途中あった立派な松。傘松と呼ばれ、二本松の地名の由来にもなっているらしい。
やっとのことで天守台に登り切って撮った写真↓
肝心の天守台の写真を撮り忘れてしまっていたが、山の上から見た風景でこの日の雨具合がなんとなく伝わるのではないだろうか。