自由研究|不思議発見体験レポート

不思議なことや、珍しいこと、物、場所を探して、考える。大人になってからやる自由研究。

台湾UFO住宅廃墟「FUTURO」/台北

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UFOの様な不思議なフォルムが特徴の「FUTURO」という不思議な物件が世界中に点在している。

しかし、その殆どは廃墟と化し、ある物は山の中、ある物は街の中でひっそりと帰る事の無い主を待ち続けているのだ。

今回は台北の海沿いにあるUFO住宅廃墟を見に行ったレポートです。

 

 

「FUTURO」(フトゥロ)はフィンランドの建築家*1“マッティ・ スーロネン”氏によってデザインされた別荘住宅だ。

マッティ・スーロネンによって設計されたUFO住宅

別荘と言っても家型の邸宅とは違い、一言で表すなら“UFO”というのが一番しっくりくる。

何故この様なフォルムで誕生したのだろうか?

少しFUTUROの歴史を掘り下げてみよう。

FUTUROとは

白いFUTUROの写真

FUTUROが誕生したのは1968年。

スーロネン氏の友人の「スキー場の斜面に山小屋を建てたい」という要望から始まり、その答えに当たる理想的な形を数学で弾き出した結果、UFOのような不思議な形が完成したそうだ。

形状も斬新な仕上がりであるが、パーツを運べばボルト締めで組み立てが可能で、空港で組み立ててしまえばヘリで運ぶ事もできるという、建築方法にも斬新な手法が用いられていた。

後にロンドンで開催された展示会へ出展され、偶々イギリス女王が訪問した事で話題が広がり、世界中から注目される事となる。

アメリカ、ロシア、南アフリカ、日本…そして、今回やってきた台湾等々、あらゆる地形や条件に適応できるFUTUROは、フィンランドから各国へ向かうフライト予定が次々に組まれていったのだが…

後にやってきたオイルショック(1973年)の影響で製造は中止、計画は頓挫。外壁にプラスチックを存分に使用したのが災いしたのだ。

止む無く製造は中止となってはしまったのだが、辛うじて難を逃れたFUTUROだけが約束した国々で建設されたのだが、長く使われる事なく今ではその殆どが廃墟化、もしくは展示用に残されている物のみ。(日本にも群馬の某専門学校にあります)

スキー小屋として現役で使われているFUTUROもあるという情報も目にしたが、未だに現存しているのかどうかはハッキリしない。

前説が長くなってしまったが、台湾の海沿いには状態の良いFUTUROが未だ何軒か残っているのだ。

UFO住宅を探して

FUTUROを見に行くキッカケとなったのは、友人達ときた台湾旅行だった。

折角の海外という事で、個人的に行きたい場所が二箇所程あった為、二泊三日の内の二日目を自由行動とさせてもらい、 半日とちょっとの台北一人旅へ出発する事にした。

最終目的地は「金剛宮」(この場所は次回)という場所なのだが、その移動経路の途中でFUTUROがある場所に立ち寄れそうだったので最初に向かうことに。

朝5時に起きたのだが準備に戸惑って6時半に出発し、宿にしていたゲストハウスから一番近い地下鉄に乗って、FUTUROがあると思われる翡翠湾まで行くバスが来る停留所へ到着した。

バスに乗って

f:id:toshiharu-hirai:20180316205910j:plain▲バス車内 テレビには終始youtubeっぽい映像が流れていた

“台湾のバスは運転が荒い”と、何処かで目にしていたのである程度覚悟していたのだが、自分が乗ったのはシートもしっかりした観光で使われていそうな感じのバスだったので、割りかし快適に移動できたように思える。(それでも結構速い)

乗っている間は日本とあまり相違ない風景を眺めたり、バスに備え付けられていたテレビを観たりして過ごした。

座席付近にはUSBの差込口もあったので、半日以上持ち歩くには心許ない電子機器達を充電することもできた。

なんだか観光気分で乗り続ける事約1時間、目的地の翡翠湾に到着。

バスを降りた先に見えた翡翠湾の看板

忘れ物がない事を確認して下車し、食い気味に出発するバスを見送って“翡翠湾福華渡仮飯店”というホテルを目指す。

翡翠湾海水浴場へ

只今到着した翡翠湾には海水浴場がある。

このエリアは、その海水浴場を中心としたビーチリゾートで、FUTUROはその近辺に点在している。

自分が目指していた翡翠湾福華渡仮飯店(名称長いのでホテルで統一します)とは、つまりのところリゾートホテルといった具合だろう。

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しかし、どこの旅行系サイトを覗いてもビーチリゾートとしてあまりフューチャーされていない此方の翡翠湾海水浴場。

中に入ってみると、なんとも寂れた雰囲気が満載である。

ホテルのお隣にあった城のような建物は、元々はかなり広いプールだったそうだが、近場で見た限り完全に廃墟化している。

f:id:toshiharu-hirai:20180316062158j:plain▲真新しい建物に見えるが中身は廃墟のプール

それに伴ってなのだろうか、車用の入口は瓦礫でバリケードされていた。

瓦礫のバリケードで塞がれた翡翠湾への道

近隣はこんな感じなのだが、勿論ホテルは絶賛営業中なので、海へ向かう家族連れが海水浴の準備をしていたし、裏手にあったバカ広い駐車場の一割くらいは車が駐まっていた記憶がある。

ギリギリでやっているんだな…という所感を頭に漂らせながら海の方へと歩いていると、目的地のUFO住宅をあっさり見つけたのだった。

最初に見つけたUFO住宅

UFO住宅「FUTURO」

台湾に限ったことではないのかもしれないが、大通り(国道?)とは違った細い道にも名前が付けられているようで、現在自分が歩いているのは海沿いの“日光路”という名前の道路。

日光路沿いに見えるUFO住宅FUTURO

まさにその名の通りで、九月の台湾の日光は容赦無く体力と水分を奪ってくる。

周辺は廃墟だらけなのだが、朝一から海辺で釣りに興じる人や、原付で爆走しながら犬の散歩をする人等々。

海沿いで釣りをする住人
原動付きバイクで犬の散歩をする近隣住人

汗ダラで歩く自分と違って、とても長閑な光景だ。

この日光路沿いにスーロネン氏デザインの住宅(廃墟)が点在しているのだけど、やはり一番に目がいってしまうのは目当てとしていたFUTURO。

間近で見た白いFUTUROの写真

草木に囲まれたFUTURO
色違いで並ぶ二件のFUTURO

此処には白と黄色の二色のFUTUROがあるのだが、他にも外壁が青い物も存在するらしい。

黄色と白色のFUTUROを見渡した写真

恐らくは海沿いという事もあって、空と海水から離れた色がチョイスされたのだろう。

外観で注目して頂きたいのが足場。

FUTUROを支える石造りの土台

FUTUROはV字型の四本の支えの上の丸いリングに、スッポリ収まるように設置されている。

元々は山の中に建てられる想定で作られている為、場所を選ばず建築できるよう、このような土台を設置してから本体をその上に乗っけるのだ。

普通の住宅に見える此方の建物。

廃墟群の中にある一見普通の住宅

回り込んで裏側から見てみると、FUTUROが住宅と合体するように組み込まれていた。

住宅に組み込まれたFUTURO

中を覗いてみるとFUTUROを支える土台がリビングにドーンと配置されている。

リビングに設置されたFUTUROの土台

見た感じ最近まで使用されていた様子だが、この様な珍しいドリームハウスも台湾には残っているのだ。

FUTORO内部へ

廃墟と化したFUTUROが此処には6件程あって、ドアが開いている物もあれば施錠されている物もある。

ドアが壊されてしまって開けっ放しになっているFUTURO
強引に施錠されているFUTUROのドア

中身はというと、リビングの窓際にはソファーがズラリと並び、円形のキッチンがど真ん中に設置されている。

入ってすぐにあった円形のリビング

リビングの中心ある円形のキッチン

このキッチンを囲むように人が集まれるパーティー仕様の空間は、当時男性にとても人気があったそうだ。

間取りの半分はリビングで、残りの半分はシングルベッドとダブルベッドの寝室が二部屋と浴室が一部屋。

シングルベッドのある部屋
ダブルベッドのある寝室

荷物がそのまま放置されていた浴室と浴槽

見ての通りかなり狭っこいし、窓も小さいのでかなりの圧迫感を感じる。

もともとフィンランドで設計された建築物というのもあると思うのだが、この明らかに風通しの悪そうな構造せいか、室内はかなり湿気がこもっているしメチャクチャ暑い。

窓際に放置された扇風機▲各建物に必ずと言っていい程 扇風機が放置されていた

個人的にはこの蒸し暑さが、この一帯を廃墟化させた要因の一つなのではないかと推測している。

FUTUROに備え付けられていた冷暖房のスイッチ▲冷暖房装置はあった様子

全て部屋の構造は一緒なので、代わり映えが無いと言ってしまえばそこまでなのだが、リビングを子供部屋のような内装に変えているFUTUROもあった。

子供用のスポンジタイルが敷き詰められたFUTUROのリビング

壁に掛けられた犬の針金アート
窓から外を覗く犬のぬいぐるみ

中にはファミコンや日本人歌手のカセット(のパッケージ)が落ちていたりする。

押入れに入っていたファミリーコンピューターの本体とカセット
室内に落ちていた日本人歌手のカセットテープのパッケージ

何となくに気なって調べて見たところ、80年代の台湾では“哈日族”という日本文化に熱狂する人が多くいた時期があったそうだ。

恐らくはこのFUTUROの住人もその一人だったのだろう。

全体的に状態としては悪くないのだが、此方の様に半壊してしまっているFUTUROも存在する。

半壊してしまっているFUTUROの内部

VENTURO

翡翠湾日光路にはFUTUROの兄弟に当たる、VENTURO(ヴェントゥロ)という箱型の物件も残されている。

VENTUROの全景写真

VENTUROとFUTOROはレジャー用に開発されたという点は変わりはないのだが、見た目以外にも違いがある。

FUTUROは足場を地形によって変化させる事で建てる場所を選ばないという特性を持っていたが、VENTUROは用途によって大小様々な設計が用意されていたそうだ。

例えば海水浴場にあるフードスタンドのような小さいVENTUROだったり、フィンランドにはガソリンスタンド型の大きいVENTUROが今でも現役で存在しているそうだ。

日光路にはFUTUROよりもVENTUROの方が多く、やはりどれも廃墟か空き家、もしくは物置代りに使われている物が殆どで、中に入れる物件は数軒しかない。

かろうじて倒壊していないVENTURO

荒れ果てたVENTUROの入り口とリビング
廃墟化したVENTUROの室内と外の景色

完全に倒壊してしまっているVENTURO

殆どは倒壊、もしくは半壊状態なのであまり紹介する部分はないのだが、ある程度原型を留めていた物を覗いてみる。

例えばこちらのVENTUROには、殺風景な室内にシングルベッドが二台仲睦まじく置き去りにされていた。

VENTUROの室内に寂しく残る二台のベッド

引き払う際に運ぶのが面倒な大き目の荷物は置いていかれてしまったのだろう。

此方は三連で並ぶ姿が印象的なVENTURO。

海に向かって三連で並ぶVENTURO

中身は同じく殺風景ではあるが、海沿いを意識した様な内装がとても印象的。

海沿いを意識したような内装のVENTUROのリビング

ちなみに此方に放置されているテレビは日本製である。

廃墟化した室内に放置されていた日本製のテレビ

ここまで紹介したVENTUROは今にも撤去されそうな物件ばかりなのだが、合間合間にとても綺麗な状態の物も幾つか存在する。

海沿いにあった使われている様子のVENTURO

子供の遊び道具が設置されているVENTURO
周辺にガーデニングが施されているVENTURO

ここにあるVENTUROは全てが廃墟という訳ではなく、未だに使用されている物件がいくつかあるようだ。

探索を終えて

今回探索してみて特に印象に残っている事と言えば、翡翠湾周辺の住人や海水浴客が明らかに廃墟感満載のFUTURO筆頭の廃墟群を気にする事無く生活しているという点だった。

既に10年以上この様な状態であるのだろうから、慣れた光景で免疫ができてしまっているのかもしれないが、あまりに周囲は日常的で何ともシュールな光景だった様に思える。

一時の栄光の後に時代の暗い影に埋もれてしまったFUTURO、そして派生として作られたVENTURO。

その両方が未だに取り壊されず現存している理由については、調べてしまえばきっと簡単な事なのだろうけど、そこはミステリーで留めておくのも良いのかもしれない。

*1:参考:Dreaming Future House:1968 FUTURO 北欧・謎のUFO住宅を追え!